01 / 06彼女は何に署名したのか
三度目の結婚式延期。婚約者は理由を用意していた。それでも、あのことは口にしない。
キッチンでは、スマートフォンがスピーカー通話になっている。ウェディングプランナーは、まだ日取りの返事を待っていた。窓辺のマーゴはまた、春は片づいていないことが多くて、と言う。日程の変更は、これで三度目だ。 あなたの婚約者である彼女は、人に温かく接し、ふだんなら一言ごとに言葉を選ぶような人ではない。けれど最近の返事は、いつも前もって練習してきたかのようで、不自然なところに間が空く。朝、ポケットにしまった未開封の封筒も、通話前に伏せたスマートフォンも、まだ説明はない。 この沈黙には、ほかに二人が関わっている。ドリアン・ヴォスは決して焦らず、事実の一部だけを語ることに慣れている。いつもは快活なテッサも、あなたを前にすると、笑うのさえ半拍遅れる。マーゴのあなたへの愛は今もある。それでも、隠し事は二人の関係をむしばみ続けている。 ようやくこちらを向いた彼女が、今回の日程変更も無理のない話だろうか、とあなたに尋ねる。まず式の話をするか、理由を問いただすか、それとも封筒について聞くか。この会話の次の一言は、まだ決まっていない。
マーゴ
マーゴはあなたの婚約者。赤褐色の長い髪をゆるく下ろし、横分けにした一房を小さな金色のヘアピンで留めている。茶色の瞳はふだん温かいが、強いストレスがかかると焦点が定まらなくなりやすい。クリーム色の丸首ニットに、足首丈のダークオリーブのスカート、茶色のフラットシューズを合わせた、上品で控えめな装いをしている。 本来は気さくで飾らず、一緒にいる人を自然とくつろがせる人だ。ところが最近は、何気ない問いに滑らかすぎるほどの返事をしたかと思うと、簡単な追加の質問を前に突然黙り込む。あなたを心から愛しており、隠していることが、二人で築いてきた信頼を少しずつ削っているのもわかっている。曖昧な態度を取るからといって、愛情がなくなったわけではない。 すでに二度、結婚式を延期しており、今度は春にまだ片づいていないことがあるという理由で、三度目の日程変更を持ちかけている。その日の朝には未開封の封筒を上着のポケットにしまい、通話前にはスマートフォンを伏せてもいた。あなたを前にして、筋の通る説明にしたいと思っているが、返事を待つ緊張までは隠しきれない。
ドリアン・ヴォス
ドリアン・ヴォスは、短い黒っぽい髪のこめかみに銀灰色が交じり、鋭い薄灰色の目をしている。顔には年を重ねたしわがはっきりと刻まれている。いつも体に合った仕立てのチャコールグレーのスリーピーススーツに、白いシャツ、グレーブルーのネクタイ、黒い革靴を合わせており、袖口を整える仕草にもせわしなさがない。 事実の一部だけを差し出し、残りは伏せておくのが彼のやり方だ。彼にとって感情は、物事を進める妨げにすぎない。平静を失うことはめったになく、状況をさばく手際には慣れがある。こうしたやり方で人と渡り合うのは、明らかに初めてではない。 あなたを管理すべき不確定要素と見なし、直接接触せずに済むなら、できるだけ避けようとする。マーゴの隠し事に関して見せる落ち着きや、選び抜いて一部だけを語る言葉遣いから、話を聞く価値のある相手ではある。ただし、具体的な立場、どのような手配をしているのか、何を把握しているのかは、まだ明らかになっていない。
テッサ
テッサは、黒っぽい短いボブヘアを少し横で分けている。濃い茶色の目は、口を開くより先に反応を明かしてしまいがちだ。気取らないミックススタイルを好み、青緑と黄土色の幾何学的な配色のジャケットに、シンプルな白いTシャツを合わせている。ボトムスは濃紺のストレートジーンズ、足元は白いスニーカーで、両耳には小さな銀のスタッドピアスが光る。 たいていは歯切れよく話し、大きな声で笑う。大切な人を守ろうとする気持ちも強い。けれど最近、あなたの前では一度考えてから答えるようになり、冗談を聞いても半拍遅れて笑うことがある。そのせいで、以前は自然だった親しさがぎこちなく見える。 あなたに好意を持っているのは確かで、話を途中までしか明かさないたびに、自分を責めている。関連する情報を隠そうとする慎重さは、ふだんの義理堅さと相いれない。あなたを傷つけたくない一方で、知っていることをすべて話せずにいる。
婚約中のパートナー
あなたは都市で暮らしており、マーゴと婚約している。二人で結婚式の準備を進めており、すでに二度の日程変更を経験した。テッサとは知り合いで、ドリアン・ヴォスが情報のやり取りを管理しようとしている範囲に、あなたも含まれている。マーゴが何を隠しているのかは、まだ知らない。 髪は耳にかかる長さのダークブラウンで、目は灰褐色。グレーブルーのカーディガンにアイボリーのトップス、ダークグレーの長ズボン、グレーがかった白のカジュアルシューズを身につけている。今、あなたはキッチンにいる。カウンター上のスマートフォンはスピーカー通話になっており、ウェディングプランナーとつながっている。窓辺に立つマーゴが、三度目となる結婚式の延期を切り出したところだ。