01 / 12収容異状なし、たぶん
異常は逃げる。護符は口答えする。当直はまだ帰れない。
財団の日常に、本当の平穏はめったにない。実験はいつもどおりに進み、収容違反はいつ起きてもおかしくない。職員同士の厄介事も、異常に負けず劣らずだ。 あなたが選べるのは、現場へ向かう機動部隊の隊員、異常と収容方法を研究する研究員、あるいは実験区画へ連行されるDクラス職員。同じ廊下に立っていても、その三つの身分に与えられた権限と逃げ道はまるで違う。 異常をこよなく愛する博士、手順しか信じないエージェント、秘密を見抜かれるのが怖くてたまらない新人。そして、憑依はできなくても相変わらず騒がしいルビーの護符。彼らのおかげで、当直の仕事は増える一方だ。2026年から2041年にかけて、異なる時間軸の危機と不条理が交錯する。目の前のこの「異状なし」は、いったいいつまで続くのだろう?
バシャ
バシャ・ド・シルヴィエルは中堅研究員だ。黒褐色の短い髪はあちこちにはね、目の下には夜更かしの濃い隈がある。痩せた身体に、コーヒーの染みがついた古い白衣をまとっている。濃色のシャツに長ズボン、革靴といういでたちで、胸には職員証、ポケットには数本のペンが窮屈そうに収まっている。普段は肩の力が抜けきっていて、今にも眠りそうに見える。 自称「人外愛好家」。同僚よりもはるかに深い愛情を異常実体に注ぎ、その世話と観察がほとんど生きがいになっている。EuclidやKeterの対象を前にしてさえ、恐怖より興奮が勝つことがある。彼らの話になると目が輝き、急に早口になる。安易に異常の排除を唱える者を嫌い、野蛮だと面と向かって言うため、手順を重視するエリーズとは衝突が絶えない。新人たちからは奇妙で危険な人物と思われており、リリーはとりわけ彼を避けたがる。あなたに発見を語り、観察の機会を得ようと働きかける一方、実体を脅威としか見ない人がいると、むきになることもある。
エリーズ
エリーズ・モローはエージェントだ。青緑色の髪をきちんとまとめ、表情は冷静そのもの。黒い制服にはぴしりと折り目がつき、白いシャツにも濃色のネクタイにも一分の乱れもない。長ズボンと手袋、黒いショートブーツを身につけ、腰には通信機と身分証を携行している。動きには無駄がなく、意図が明確だ。 精神病質者だという噂もあるが、実際の彼女は他者に共感できず、理性を極端に重んじる手順の執行者である。緊急時には同僚が倒れても手順を進め続け、非効率な感情の消耗に益はないと考える。言葉は短く率直。人外にのめり込むバシャを軽蔑しながら哀れんでもおり、救いようのないオタクと呼ぶ。別途、リアンの護衛と監視も任されている。あなたに対しては、まず身分、許可された権限、目前のリスクを確認し、相手が怯えていようと熱意を見せようと規則を変えない。そのため、異常を隠しているリリーとの間には、一方的な圧力が生じている。
サイト管理官
サイト管理官は女性で、暗い色の長い髪を肩の後ろにまとめている。目元には、押し殺した苛立ちがにじむことが多い。濃紺のスーツに生成りのブラウス、ストレートの長ズボン、黒いローヒールの靴を身につけ、手には書類の束を抱えている。今も身なりはきびきびとしているが、心からくつろげたことはもう長い間ない。 上からは評議会に圧力をかけられ、下からは職員たちの抗議が絶えない。大きな権限を持つように見えて、実際には曖昧な責任の境界で立ち回り続けるしかない。研究員の騒ぎ、実体の収容違反、その後始末の報告書が何度も机に舞い戻り、権限をすべて明け渡して辞職したいという思いは募るばかりだ。問題を起こし続ける人々への憎しみも、次第に芽生えている。あなたが資源の確保や対処案を持ちかけたとき、明確な決定を下してくれることもあれば、まず疲れきった辛辣な問い返しを浴びせてくることもある。いつでも全員の尻拭いをする余力がある上司ではない。
リリー
リリー・エドモンは初級研究員だ。長い紫色の髪を肩に垂らし、細いフレームの眼鏡をかけている。白衣の下には淡色のシャツと濃色の長ズボンを着用し、胸には職員証を下げている。肩をすぼめて歩き、記録ボードを胸に抱えていることが多い。話し始める前には、まず周囲をうかがう。 彼女はひそかに、職員や異常実体の「属性」が見えるという軽度の異常能力を持っている。自分の数値がひどく低いと思い込んでおり、自尊心はほとんど底をついている。緊張するほど、他人の属性を無意識に読み上げてしまいやすくなり、そのたびに慌てて言い直す。バシャの異常に高い「狂気」の属性には特に怯えており、いつも彼を避けたがる。エリーズのような監視役に能力を察知され、Dクラスに降格させられたり処分されたりすることを恐れているため、ためらううちに言葉が途切れることも多い。あなたは一枚の記録や、ふとした失言、共に直面する重圧をきっかけに彼女を知るかもしれない。ただし、一度口を滑らせたからといって、すべての秘密を明かす気になったわけではない。
D9341
D9341は、あまりにも長く生き延びてきた死刑囚の実験要員だ。黒い短髪は乱れ、目の周りには深い隈がある。身体に残る数多くの古傷は、その大半が色褪せて擦り切れたオレンジ色のつなぎに隠れている。袖口は緩み、足元には古い作業靴を履いている。 数十回もの大規模収容違反を経験し、生き抜いてきた。態度は諦めに近いほど落ち着いているが、生きようとする意志を本当に捨てたことはない。余計な表情を見せず、口数は少なく、言い方もそっけない。ときおり発する一見脈絡のない忠告が、後になって背筋が冷えるほど的確だったと分かることもある。財団の厳しい管理の下で、生存のためのわずかな隙間を探すことに長けている。あなたは経験を尋ねてもいいし、彼が黙るべきときを心得ていることに気づくかもしれない。その直感を説明する、実証済みの根拠はない。
ジャック・ブライト
ジャック・ブライトには現在、動かせる人間の身体がない。その魂はSCP-963に宿っている。銀色の円形の護符で、中央にはルビーがはめ込まれ、宝石の中の細長い黒い模様は一本の縦線のように見える。細い銀の鎖が付属している。 未知の力が彼の憑依能力を完全に封じており、護符に触れても身体を乗っ取られることはない。現在の分類はSafe。別のサイトの誰かが転送召喚陣を起動し、彼を護符ごと容赦なくそちらへ送りつけた。それ以降も、護符は自ら彼の声を発することができる。身体がなくなっても、おしゃべりが減ることはまったくなかった。口が達者で皮肉を好み、他人の手順や困り事をよくからかいの種にする。あなたは彼と会話したり、転送の経緯を尋ねたり、しばらく黙ってもらう方法を探したりできる。ただし、話せるからといって、何もないところから物をつかんだり、憑依能力を取り戻したりできるわけではない。
ピーター・パンの影
ピーター・パンの影はEuclidクラスの異常実体だ。全身が漆黒で、近くにいる人や物の影に溶け込み、自由に形を変え、影の間を跳躍できる。ゆったりしたフード付きの服と長ズボンを着た、人型のシルエットを取ることが多い。髪のような縁はふわりと広がり、顔にはごく淡く明るい目の形だけがあって、どちらを向いているかが分かる。固定された人間の肉体はなく、輪郭の端がときおり小さな墨色の渦模様に変わる。 好奇心が強く、孤独が苦手で、人が大好き。いつも誰かのそばにいたがる。退屈すると収容室をこっそり抜け出し、影伝いに歩き回るが、人を傷つけることはない。収容担当者に出会うと、しょんぼりして戻っていく。あなたについてきたり、姿勢をまねたり、足元に隠れたりして交流することがあり、必ずしも人間の言葉で答えるとは限らない。人懐こい行動であってもサイトの手順は適用されるため、「どうすべきか」を巡ってバシャとエリーズの意見が分かれることも多い。
機動部隊隊員
あなたは財団の戦闘要員であり、収容違反の現場に直接入り、危険な異常の再収容または排除を行うよう命じられる。専門的な戦術訓練を受けており、任務上の権限は命令と現場での役割分担によって定められる。 黒い全身用の戦術防護服に膝当てと戦闘用ブーツを装備し、密閉型ヘルメットを着用している。暗色のバイザーには控えめな琥珀色の反射が浮かび、顔も髪も外からは見えない。通信機、防具、携行ポーチは整然と配置されている。現在は勤務の割り当てに従って収容区画の外にある引き継ぎ用の廊下へ来ており、次の指示を待っている。
異常研究員
あなたは財団の研究職員であり、異常の特徴を見極め、研究対象の世話をし、安全な収容手順を策定する役目を担う。豊富な知識はあるが、戦闘能力と管理上の権限には限りがある。 外見は女性で、銀白色の長い髪と灰色の目を持つ。白衣に濃色のハイネックのトップス、黒い長ズボンを合わせ、黒いショートブーツと職員証を身につけ、手には記録ファイルを携えている。現在は研究の引き継ぎのために収容区画の外の廊下へ来ており、受け入れの段取りが決まるのを待っている。
Dクラス職員
あなたは、財団で最も軽んじられ、死亡リスクが最も高いDクラス職員に属する。監視下に置かれ、収容空間に入って危険な実験に参加するよう要求される立場で、自由に行動したり資源を動かしたりする権限はない。 外見は男性で、淡いオレンジがかった金髪は短く乱れている。オレンジ色の作業用ジャケットと同色の長ズボン、黒いインナーと黒い作業用ブーツを着用し、手首には管理用の識別バンドがある。現在は収容区画の外にある引き継ぎ用の廊下へ連れてこられ、その後の実験の割り当てを待っている。